それらすべてが愛になる
 「都筑…?いえ知りませんが」

 「ご主人はそうでしょうね。以前私との縁談が組まれた女性です」

 清流と再会した料亭で洸がお見合いをしていた相手で、維城商事のグループ子会社と取引のある会社の娘だ。
 洸の父親である駿と麻由子の父親が大学時代に所属していたラグビー部の先輩後輩の仲とかで、断り切れず受けた縁談だった。

 「……私も、そのような方は存じませんわ」

 「嘘ですね、これまでさんざんやり取りしてるじゃないですか」

 洸が鞄から取り出していた文書を佐和子の目の前に置く。
 佐和子と麻由子のメールの内容をプリントアウトしたものだった。

 そこには佐和子から都筑麻由子宛てに、洸の婚約者が工藤清流であること、彼女の過去に関すること、それを利用すれば二人を別れさせることができ貴女の恨みも晴らせる…といった複数回に渡るやり取りの内容が書かれている。

 「氏原崇史というフリーライターを彼女に紹介したのもあなたですね。あぁ、こちらはもう氏原とも接触済みですから否定は結構です。時間の無駄ですので。

 氏原は都筑麻由子から『維城商事の御曹司に関して面白いネタがある』と持ちかけられたと吐きましたよ。都筑さんが清流になりすまし戸籍を不正に取得したことも本人に確認済みです」

 氏原の話から都筑麻由子の名前が上がり、彼女に接触したのは洸だ。


< 204 / 259 >

この作品をシェア

pagetop