それらすべてが愛になる
 佐和子は料亭の女将と随分親しそうだった。
 あの日の洸の縁談相手を知るのはたやすく、女将に探りでも入れさせて麻由子が洸に未練があると知り利用しようと考えたのだろう。

 「あなたはメールで指示を出すだけで氏原との連絡はすべて都筑さんにさせた。そうすればご自分は安全だと思いましたか?」

 隣りに座る叔父の久志は、おろおろと佐和子と洸の顔を見比べている。
 おそらく彼には、いったい洸が何の話をしているのかいまいち理解できていないに違いない。

 ずっとテーブルに目を落としたままで表情の読めなかった佐和子が、顔を上げる。

 時間を掛けてゆっくりと息を吐くと、笑顔を作って目の前に置かれた文書をすっと洸の前に突き返した。

 「……その都筑麻由子さんという人とやり取りした相手、このメールの相手が私だという証拠は何かあるのかしら?」

 「……はい?」

 「『早乙女佐和子』と名乗る人と電話やメールをしたのは事実なんでしょうけど、それが私自身だという証拠は何もないわけでしょう?誰かが私の名前を騙って都筑さんを利用して、加賀城さんと清流を貶めようとしたのかもしれないじゃありませんか」

 (この期に及んで……)

 すごい神経の持ち主だ、と洸は内心呆れるとともに感嘆する。

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