それらすべてが愛になる
 「おそらくあなたは気にもされていないでしょうが、メールにはヘッダ情報が付随しているんですよ。この『Received』の部分の読めばメールが送信されてきた経路が分かります。
 細かいことは理解できないでしょうから省くとして、肝心なのがこの送信者側のメールサーバのIPアドレスです」

 洸が示してた場所を佐和子が怪訝そうに眉を顰める。

 「それが何か?それが分かったところで、」

 「ええ、個人の特定まではできません。
 が、今回は清流の戸籍を都筑さんが不正に入手したという明確な法令違反があるので、こちらが法的措置に動けば都筑さんは少しでも自身の罪を軽くするためにこのメールを証拠として提出するでしょうね。報酬に関するやり取りも残っていますし。

 『早乙女佐和子』なる人物を特定するためにプロバイダの開示請求をすれば、個人情報はすぐに分かります」

 洸はうんざりしたような気持ちで淡々と説明を続ける。

 「複数回に渡るメールはすべて同一のIPアドレスです。おそらく自宅のパソコンを使用していたんでしょうけど、初歩的なミスでしたね」

 法的措置、という言葉に久志は再び狼狽えはじめ、佐和子の表情はみるみる色をなくしていく。

 「あなたにとってはこちらが氏原崇史に辿り着くことは想定外だった。
 清流がすべてを隠したまま姿を消すはずだと思っていたし、それを疑わなかったから」

 清流が最後に残していった手紙を洸がテーブルに置くと、佐和子の目が大きく見開かれ、信じられないものを見るような目で見つめた。


 自分が不利になるようなこと、損をするようなことをあえてする理由が、佐和子には分からないだろう。


 ―――最後に、すべてを明かして姿を消した理由。


 その清流の真っ直ぐさを、佐和子は永遠に理解できないに違いない。

 そう思うと、目の前の女性が途端に哀れに思えてきた。


 「清流を見誤ったこと、それがあなたの誤算です」


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