それらすべてが愛になる
 佐和子の態度を鼻で笑い、抗議を無視して続けた。

 「借金額が大きかったのが今から五年前。清流が大学に入り、のちに入籍した年です」

 結婚相手は二回り年上の資産家だとあった。
 清流の結婚には何らかの取引があり、佐和子は相手側から見返りとして金銭を受け取って穴埋めにしたのではないか。

 「そして現在、当時と同額に近い借金を抱えている。
 そういえば…私が清流と結婚したいとあなたに話したとき、結納金のことをずいぶん気にしていましたね?あなたの目的はそれだったのでは?」

 『ところで、結納金は弾んでいただけるのかしら?』

 あのとき洸は清流をどう説得するかに気を取られていたが、今思い返せばあれこれと話す佐和子は性急に話を進めたがっていた印象がある。
 けれど、自分の知らないところで六ヵ月の試用期間を設けていたことで、結婚話はとんと進まなかった。当然、あてにしていた結納金もいつまで経っても入らない。


 おそらくそれで麻由子と結託したのだ。


 清流の情報を売り、わずかでも金を手に入れるために。


 「……そいのよ」

 「はい?」

 「遅いのよ何もかも!すぐに同居をして話が進むのかと思えばそれから一向に音沙汰はないし、一度あの子にどうなってるのか聞いたらまったく何も進んでないどころか『本当に結婚するかは決まってない』とか曖昧なこと言って!」

 佐和子は、清流と洸が六ヶ月の試用期間を設けたことを知らない。
 いつまでも結婚話が進まないことに痺れを切らしていたのだとしたら。

 「さっさとしなさいと言っても仕事が忙しいだのなんだのとはぐらかして…
 何のために大河内さんの話を蹴ったと思っているの?
 こんなことならあなたの話を受けずに縁談を進めて、こんな会社もあの子も渡してしまえばよかった!!」

 佐和子は顔を歪めて、制御がきかなくなったかのように喚き散らす。
 テーブルの上の資料をぐしゃぐしゃに握りつぶされていた。

 「あの子はいつもそう。変なところで頑固で、自分のやりたいことを押し通してちっとも言うことを聞かない!そんなところも姉とそっくり!

 あんな子嫌い、大っ嫌いよ!!」

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