それらすべてが愛になる
 ◇◇◇◇

 振り返れば、ずっとずっと思い通りにならないことばかりだった。

 あるとき気がついた。
 こんなの私の人生じゃない。

 早く私の人生を、取り戻さなくてはいけないと。


 地方ではそれなりの名士の家柄で、それ故にこうあるべきという自分たちが考える理想が厳格な両親に育てられた。

 習い事はお茶とお花とピアノ、進学はすべて地元、女子わざわざ四年制大学に進む必要はなく、早くにいい人と結婚するのが何よりの幸せ。

 姉の早希子(さきこ)は、事あるごとに両親の方針に反発しては衝突していた。

 二人が進める習い事は一つもせず、部活は運動部に入って日焼けで真っ黒、大学は両親の反対を押し切って東京の大学へ進学して家を出た。
 いずれ泣き言をいって戻ってくるという両親の見立ては外れて、早希子はバイトと学業を両立させ、卒業後は発展途上国の支援をしたいと海外に飛んだ。

 『お父さんたちの言いなりになる必要なんかないんだよ。佐和子も自分でやりたいことあるんじゃないの?』

 確かにあった。
 やりたいこと、なりたい夢。

 でも親の敷いたレールの上を歩いてきた自分にそんな勇気はなかったし、外に出て自分の道を切り開くことなど、その後の反発を想像すると恐ろしくてできなかった。

 『早希子はだめだわ。だからあなただけが頼りなのよ』

 そんな自分にとって、両親の言葉はよりどころだった。

 姉よりも頼られている自分は、家での立場が逆転したようで高揚したのを覚えている。

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