それらすべてが愛になる
 そして今から十年前。
 早希子の夫・哲人が事故で亡くなり、直後に早希子も病に伏せた。

 度重なる不幸にショック受けながらも、佐和子は内心安堵のようなものを感じていた。

 ―――ああ、やっぱり私の人生の方が正しかった。

 やはり帳尻はどこかで合うもので、身の丈に合わないことをすれば無理がたたり、どこかで狂いが生じるのだと。


 「……こんなことになって、可哀そうな姉さん」

 地元に残っていれば。
 海外で哲人さんと出会わなければ。
 哲人さんと結婚しなければ。

 こんな不幸なことにはならなかったかもしれないのに。


 病室で横たわる早希子が、一瞬驚いた顔をした。


 「あのね佐和子、私は一つも後悔してないの。これまで十分幸せだったし、もしもう一度どこかからやり直せるとしても、私は同じ人生を選ぶと思う」


 そう言って穏やかに微笑む早希子に、打ちのめされた。

 「でも、ただ一つ心残りがあるとしたら…清流ね」


 ―――清流が?


 「だから、もし私に何かあったら、清流のことをお願いできる?」


 その二ヶ月後、早希子は息を引き取った。


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