それらすべてが愛になる
 身寄りのなくなった清流は、佐和子たち夫婦のもとで暮らすことが決まった。

 そして、東京に残された会社をどうするか?となったとき、佐和子の中でずっと燻っていた思いが一気にわき上がった。

 自分にあったかもしれない、もう一つの人生。
 もしかしたらそれを取り戻せるのでは?

 幸い久志は良家とはいえ次男であり、会社を継ぐためならと東京行きをあっさりと了承したし、清流もそのまま生家で暮らせるとあって反対もしなかった。

 佐和子が社長に、久志が役員におさまる。

 今まで何の肩書も持たなかった自分が『社長』という名前を得たことは大いに満たされたものの、それも長くは続かなかった。多少勉強したものの事業の内容はあまり理解できず、古参の社員が辞めていくにしたがって業績もどんどん悪化していく。

 『またよく知りもせず首を突っ込んできたよあの人』

 『仕方ないよ、先代と血縁ってだけで社長に収まった人だし』

 『先代の頃はよかったよなぁ…清流ちゃんもほんとかわいそうに』


 いったい何が違うの?

 やっぱり私には何度やり直しても、両親がレール敷いた『あちら』の人生しかなかったの?


 すると次第にまた買い物にのめり込んだ佐和子は、支払いが追い付かず借金をするようになっていた。

 『将来お父さんの会社を継ぐために、大学で経営学を学びたいんです』

 高校生の清流がそう告げたとき、佐和子は全力で反対した。


 ―――絶対にだめ。


 ただどんなに反対しても、清流の意思は固かった。
 まるで姉の早希子と同じように。


 早希子の唯一の心残りだった清流。

 その清流には、佐和子自身と同じ人生を歩ませなければ気が済まなかった。

 会社なんて継がせない。清流が早希子と同じ人生を歩むことは、『佐和子』の人生を否定でもあったから。

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