それらすべてが愛になる
 その姿を見ても、洸には冷めた感情しか湧かなかった。

 「……頭を下げる相手が違うのではないですか?」

 そう言うと久志ははっと顔を上げて、そうですねと小さくうなだれるようにして呟いた。

 これですべて終わった。

 もう、この場で自分がすることは何もない。


 久志はこの後、佐和子の借金は二人で返すこと、会社についてはどうするか今後考えること。
 巻き込んだ都筑麻由子と、そして清流には後日改めて謝罪をしたいといった旨の話をしたが、洸にとってはどうでもいいことだった。


 「……それで気が済むのなら、されたらいいと思いますよ」


 久志にそのつもりはないだろうが、傲慢だと洸は思った。

 きっと謝罪を受けたら、優しい清流は許すだろう。

 どれほど酷い叔母であろうと、彼女にとって母親の妹であり唯一の肉親でずっと憎みきれるものではない、怒るのも憎むのも疲弊する。いつかは許すしかないのだ。

 それでも。


 「それでも、私だけはあなた方を許すことはない。
 あなた方の目の前にいる人間は、その気になれば一切の手段は選ばない人間だということを、よく覚えておいてください」


 本当の意味で許される日は来ないのだと思い知ってほしい。


 そのことは、この閉じた場所だけでの話。

 清流は知る必要もない話だ。


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