それらすべてが愛になる
 マンションに戻ってきて、車が玄関の前に停まった。

 車から降りるときに手を差し出されたので、反射的にお礼を言って手を取ったのだが、降りた後も握られたままマンションの中へと入っていくので、清流もさすがに狼狽えてしまう。

 「あ、あの……」

 「ん?」

 「私、ここで逃げたりはしないですよ…?」

 そう言っても洸は一笑しただけで、車のキーをスタッフに預けると手をつないだままエントランスを通って行くことになってしまった。

 (いきなりいなくなったし、信頼されてないのかな…?)

 自分の行いを思えば仕方のないことだと思いながらも、この状態は気恥ずかしくて早く部屋に着いてほしいとエレベーターの表示盤ばかりを見つめてしまう。

 一週間前に出た部屋は、当たり前だけれどほとんど何も変わっていなかった。
 もう戻らない覚悟だったのにここにいることが不思議で、本当に現実なのかなと思ってしまう。

 促されてソファーに座ると、すぐ隣りに洸も腰を下ろした。
 手は離されたものの、今までなら一人分は空いていたはずの距離が、今は車の中よりも近くて途端に落ち着かなくなる。

 (どうしよう、とにかく何か話を…)

 それを指摘するのも変に意識しているみたいで、何とか意識を逸らそうとずっと気になっていたことを聞いてみることにした。

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