それらすべてが愛になる
 脱がした服を無造作に放り投げるのではなく、軽く畳んでベッドサイドに置いてくれるのが、洸の育ちのよさと几帳面さを見たようでこんなときなのに少しおかしかった。

 肌を晒している心許なさと恥ずかしさは、触れ合った肌の温かさと安心感によって塗り変えられた。

 洸が反応を探るように、首筋や鎖骨の辺りに何度もキスをする。
 くすぐったいところとそうでもないところがそれぞれあって、弱い部分が分かると、すぐそこに戻って舐められたり優しく吸い付かれたりした。

 だんだんと、歯を食いしばってもこらえきれない声が響く。

 「清流、もう少し、頑張れそうか?」

 至近距離で覗き込む視線が、途端に色を帯びた。
 その色の深さにぞくっとして、はい、と頷くので精いっぱいだ。

 窮屈そうに残りの服を脱いでもろもろの準備をしているのが目の端に見えて、別の意味で心臓が騒ぐ。
 こういうときどうしているのが正解なのか分からないままでいると、ぴたりと寄り添われるように押し当てられたそれに、頭の奥まで痺れそうになった。

 「清流…、本当にいい?」

 「だ、だいじょうぶ、です」

 そう答えると、洸が肩口に強めに吸いついた。

 「んっ、…!?な、なんで、」

 「清流の大丈夫はあてにならないから」

 甘い感触にぞくぞくしていたら、洸が溜息交じりに少し意地悪い声で囁くので、清流は少し口を尖らせる。

 「ほ、本当です、それに、洸さんになら、何されても怖くないです」

 ―――だって、大好きな人だから。

 だから大丈夫なんですと言うと、洸の睫毛が艶かしく上下に動いた。

 「……ほんと、甘すぎる」

 少しだけ顔を顰めてから唇を甘噛みされる。
 ぽつりと落ちた言葉に躊躇いが滲んでいるのが伝わって、胸が震えた。

 「苦しかったら、ちゃんと言って」

 「……はい、」

 脚を持たれる気配に少しだけこわばると、苦しそうな吐息が耳に触れた。


 「……ほんと、好き。もう止まれないから、覚悟して」


 乞うように囁かれたら、わずかに残っていた力も抜けてしまう。


 「清流、愛してる。俺の、ただ一人だから」



 お互いがいれば、この楽園さえも越えて。


 この手をつないで、どこまでもいける――そんな気がした。


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