それらすべてが愛になる
くすぐったい、と思うと同時に頭を抱きかかえられて、離れがたいように何度か角度を変えて唇をついばまれる。

「清流とのキス、好きだ」

合間に囁かれて、何か言おうとした言葉はキスに消えた。
どこに所在を置いたらいいか分からないでいた舌を、これでいいというように優しく舐められたあと深く絡めるものに変わっていく。鼻に掛かった声が零れて恥ずかしいのに、ただひたすらに求めた。

洸の手が服にかかって、清流は大げさにびくりと反応してしまう。
思わずあっ、と声を出て、気まずさで洸から目を逸らした。

「あの、い、嫌とかではなくて、その、緊張して……すみません、」

動揺と恥ずかしさを隠そうとするも、自分が何を口走っているのか分からなくなってくる。

「それならおあいこだな。俺もこんなに震えてる」

ほら、と頬に触れた洸の右手がわずかに震えていた。
清流は少し驚いて、少し眉を下げて笑う洸を見つめた。

上から覗き込んでくる洸の瞳は優しく、こんな体勢になっていても酷いされるかもしれないというような疑念は少しも湧かない。

清流もその手に触れて頬をすり寄せて、小さく頷いてから身をまかせた。


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