それらすべてが愛になる

18. ささやかな世界の中でも

 ふと目が覚めると、起こしたか?という声が聞こえて瞬きをする。

 目の焦点がだんだんと合ってきて、こちらを覗き込む洸が視界に入って、あっと声が出た。

 「あれ、今何時ですか?」

 「今?二時過ぎくらい…少し声掠れてるな、水持ってくる」

 そう言って洸がベッドから降りた。
 一度ぐっと大きく伸びをした拍子にシャツの裾から覗いた引き締まった腰が、仕草とは裏腹に艶めかしく映る。

 ぼうっとしていた頭に血が通いはじめて清流は体を起こすと、ペットボトルの水を受け取った。部屋の中にはバスルームの他に小さな冷蔵庫もついていたらしい。

 「体平気か?」

 「えっと、少し違和感みたいなのはありますけど…大丈夫です」

 清流の言葉を聞いて、洸は少し安堵したように笑って隣りに座った。

 「…そういえば、今日って何曜日でしたっけ?」

 「水曜、いや日付が変わったから木曜か」

 ここ最近はすっかり曜日感覚がなくなってしまっていたけれど、木曜日ってことは出社日だ。

 「清流は何ならもう一日くらい休めば?バタバタしてたし、一応病人ってことになってるから」

 「いえ、そういうわけには…ちゃんと行きますし、皆さんにもちゃんとお話しします。一週間も休んで迷惑かけたんですし」

 しかも仮病まで使って、たくさんの心配をかけた。

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