それらすべてが愛になる
 すべてを話してどう思われるだろうかと想像すると少しだけ怖いけれど。
 そんな清流の考えを読んだかのように、あいつらなら大丈夫だと言って、洸は安心させるようにぽんと清流の頭に手を置いた。

 「ということは、預かってる退職届も無効ってことでいいな?」

 「あっ……はい」

 そうだ、手紙と一緒に退職届も書いて置いていっていたのだ。
 何だかすごく前のことのように思えて、本当にまだ一週間しか経っていないのだろうかと信じられない気持ちになる。

 「会社か…行きたくねぇな」

 横から伸びた腕に引き寄せられる。
 清流の体はバランスを失って、そのまま抱きしめられるかたちになった。

 「えっ?なに言ってっ、!?」

 腕が回った腰あたりに大きな手のひらをダイレクトに感じて、思わず声がうわずってしまう。

 「あ、あああのっ、」

 「さすがにこれ以上しないから安心しろ」

 くすくすと笑われて、揶揄われたのだと頬が熱くなる。
 清流は少しだけむっとしつつも心地よさには抗えなくて、緊張を解いて背中に腕を回した。

 「ちょうど先週の今頃は清流がいなくなって一人打ちひしがれてたところだな」

 恨めし気な声に顔を上げると、唇にキスが一つ落ちてくる。


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