それらすべてが愛になる
 「清流、このおっさんに変なこと言われたりされたりしてないか?」

 「えっと……」

 『上司というよりも人として、とても尊敬しています』

 『貴方はその上司の方が好きなんですね、その方は幸せ者だ』

 あのときの会話を思い返してみると、知らなかったとはいえ、自分は好きな人の父親に思いっきり恋心を打ち明けていたような形になっていて、思い返すと今さらながら顔から火が出るほど恥ずかしい。

 しかも、駿の話を聞いててっきり思春期の息子がいるのだと勘違いしていたことは――言わないほうがよさそうだと清流は自分の心の中に留めておくことにした。


 それから洸の母のマドカが、フランスに住む親族の話や子どもの頃の洸の話などをたくさん話してくれた。洸本人は嫌がっていたけれど、それらのエピソードを聞いてとても温かい光景を思い浮かべることができた。

 その流れで、清流も両親のことや自分自身の過去のことを打ち明けた。

 話を静かに聞いてくれた二人は、同情しながらも俯く清流を安心させるように微笑んでくれた。

 「その話を聞いても、さっき話した通り、貴方がご両親の愛情をたくさん受けて育った素敵なお嬢さんだという印象は変わりませんよ」

 「そうよ、結婚式も盛大にやりましょうね!こんな可愛いんだもの、百回お色直ししたっていいくらいよ!」

 「そんなにできるかよ…ってか、清流もまだ働き始めたばかりだしすぐにってわけじゃないから」

 盛り上がる母のマドカに釘を刺しつつ、ほら心配することなかっただろ?と洸は清流に囁いた。

 「……ありがとうございます」


 清流は小さく頷いて、明るく受け入れてくれた二人に感謝した。



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