それらすべてが愛になる
 廊下に出ると、左右にそれぞれ二つのドアが並んでいる。

 「向かい奥が俺の部屋で、こっちが書斎兼書庫」

 そう言って洸がドアを開ける。
 窓際にデスクがあり、右側の壁は一面が本棚になっていた。

 (すごい、こういう収納憧れるなぁ)

 ちらりと本棚を覗くと、ビジネス書ばかりではなく海外の古典文学や現代ミステリーなど、幅広いジャンルのタイトルが並んでいだ。
 前から気になっていたタイトルがいくつか目について、思わず目をとめる。

 「気になるのでもあった?」

 「えっと、あの本なんですけど前から読みたいなと思ってて」

 図書館で借りようとしても予約数が多すぎていつ回ってくるか分からず、自分で買おうかと迷っていた本だ。

 「あぁ、読む順番でストーリーと結末が変わるやつな。俺はもう読み終わったし読みたいなら持っていっていい」

 ずらりと並んだ本の背表紙を洸の長い指がなぞっていく。そして清流が指さした一冊を見つけ出すと、本の背を少しだけ引き出した。

 「いいんですか?じゃあお借りします」

 渡されたハードカバーを受け取ってお礼を言う。

 「本好きなのか?それなら会議とかで使ってないときなら好きに入っていいし、本も持っていっていいから」

 「え、本当ですか?ありがとうございます」

 今回の引っ越しでは場所を取ってはいけないと、好きな本を少しだけしか持ってきていなかったので、読書好きな清流としては素直に嬉しい。

 ほんの少し、ここでの生活に楽しみができたようで、自然と顔が綻ぶ。

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