それらすべてが愛になる
 仕事部屋の隣りが、清流にあてがわれた部屋だった。

 部屋の中央には、送った段ボール箱が積まれている。
 壁際にはウォークインクローゼットと、こちらもマンションに備え付けだというベッドや棚、机などの家具一式が置かれていた。

 「ここが清流の部屋。ずっと使ってなかったけど、昨日一通りハウスクリーニングを頼んでおいたから問題はないはず。
 で、廊下を挟んで向かいが洗面所と風呂場。俺は自分の部屋にあるのを使うから、気にせず使えばいい」

 「寝室に、お風呂場と洗面所があるんですか?」

 「気になるなら見に来る?」

 「っ、結構です!」

 口角を上げて意地悪く笑みを浮かべる洸から、プイッと顔を背ける。

 (けどすごいな、部屋にお風呂場と洗面所があるなんて…)

 まるでホテルみたいだ、と考えて清流は忘れていたことを思い出した。

 「ホテル代…!」

 そういえば前もこんなことがあった気がする。洸に再会したときだ。
 あのとき思い出したはずなのに、その後の洸からの奇想天外な提案と日々のバタバタで、すっかり頭から抜け落ちていた。

 「またその話かよ」

 「またって、そういうお金に関することはちゃんとしたいんです、うやむやにするの嫌ですから」

 聞き飽きたとばかりに肩を竦める洸に、清流は構わず詰め寄る。

 「来月お給料いただけたらそこから返しますので」

 「いいけど、もし百万って言ったら払えるのか?」

 「ひゃ、ひゃくっ、、?!」

 「冗談だって、そんなにしない」

 (冗談に聞こえないから怖いんですけど……!)


 そのとき、ピピッという電子音がした。
 洸がしているスマートウォッチのアラーム音だ。

 「もう会議の時間か」

 「お仕事ですよね?案内ありがとうございました。私は少し荷物整理します」

 「あぁ、たぶん夕方には終わると思うから。喉乾いたら冷蔵庫の中の適当に飲んで」

 「はい、ありがとうございます」

 仕事部屋へ戻っていく洸の後ろ姿を見届けてから、清流は目の前の段ボール箱の山を整理するべく、部屋の片付けに取りかかることにした。

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