それらすべてが愛になる

6. 誰かと暮らすということ

 翌朝、清流は仕掛けたスマートフォンの目覚ましで目が覚めた。

 仰向けの状態で何度か瞬きを繰り返すと、だんだんと頭が覚醒してくる。
 備え付けとはいえきっといいマットレスなのだろう、部屋のベッドは家にあったものより寝心地が良くて、夜はすぐに眠りに落ちた。

 まだ温かい布団にくるまっていたいけれどそろそろ起きなければ。まだ重い目蓋を開けて起き上がると、大きく伸びをした。


 部屋で服を着替えてから、チェストの上に飾った両親の写真に手を合わせる。

 洗面所で顔を洗って身だしなみを整えてからリビングへ行くと、まだ洸は起きてきていないようだった。

 「あっ、朝ごはんどうしよう」

 冷蔵庫を開けてみるけれど中身は昨夜と同じ。それでも今ある材料で洋食と和食の朝ごはんを両方用意することにした。

 準備をしながら、今日買い出しに行ってもいいか相談してみようと考えていると、ちょうど洸も起きてきた。

 「あ、おはようございます」

 「…おはよう、早いな」

 「そうですか?昨日よく眠れたからかもしれません」

 よかったな、と言う洸はまだ眠そうだった。
 スタイリングされていない髪は横髪が少しはねていて、今まで気づかなかったけれど、ややくせ毛なのかもしれない。

 普段の隙のない雰囲気と違いどこか子どもっぽくて、清流は笑いそうになるのを堪える。

 「あの朝ごはんですけど、パンとごはんどちらがいいですか?昨日聞きそびれてしまってとりあえず両方作ったので、好きな方を選んでください」

 といえ、洋食はトースト、オムレツ、焼いたウィンナーのワンプレート。和食は卵焼き、玉ねぎの味噌汁、昨夜の残りのごはんという飾り気のなさで、あまり胸を張れるものでもない。
 野菜がほとんどないのも気になるが、材料がないのだから仕方がないと納得させる。

 一方の洸は、ダイニングに並んだそれらを見ながら眉を寄せて難しそうな表情をしている。もしかして、どちらも好みではなかったのだろうか。

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