それらすべてが愛になる
 「あの…」

 「じゃあ、トーストもらっていいか?」

 おかずの乗った皿に焼いたトーストを乗せ、ワンプレートにして洸の席へと置く。

 「それから、キッチンのコーヒーマシンって使ってもいいですか?」

 「あぁ、いいけど」

 「ありがとうございます、私コーヒー淹れてきますから先に食べててください」


 キッチンの作業スペースに置いてある大きなコーヒーマシン。
 右上にロゴマークがあるけれど、清流には聞き馴染みのないメーカーだった。

 「うーんと、電源はどこだろう。あ、その前にカップを用意しないと」

 CMなどでよく見るおしゃれなものよりも武骨で、無駄なものが削ぎ落されたデザイン。全面ステンレス製でボタンはブラックと、色味もとてもシンプルだ。

 カフェにあったコーヒーマシンがコンパクトになったような、プロ仕様な見た目だけれど、キッチン担当だった清流はコーヒーマシンには触ったことがなかった。

 その存在感に圧倒されつつ、まずは棚からカップを出してセッティングする。

 洸には先に食べててもらうように言ったし、こちらに呼ぶのは気が引けた。
 マシンの前で格闘してようやく電源らしきボタンを押すと、赤いランプが光った。

 (次は…コーヒー豆の絵が描いてある、このボタンかな?)

 押してみるとシューッと蒸気が出るような音の後に、ピーッと大きな音が鳴る。

 (えぇっ、ボタン間違えた?それか壊れた、というか壊した!?)

 おろおろとしていると、横から伸びてきた手が何やら操作をして音が止まった。不安を煽る音が止まって、清流はひとまず安堵する。

< 69 / 259 >

この作品をシェア

pagetop