それらすべてが愛になる
 「すみません……迷惑でしたか?」

 清流自身も、家政婦のつもりではなかった。

 夜になれば献立を立てて全員分の夕食を作る。食べたいものが違えばそれぞれ用意する。朝は一番に起きて朝ごはんを作る。

 それは染み付いた習慣のようなもので、これまで通り同じようにやっているつもりだった。

 「迷惑とかじゃなくて、朝もどっちがいいか分からないから両方作ったって言ってたけど、それなら俺が起きてから聞いてもよかったわけだし」

 「…それだと、待たせることになると思って」

 「今日は休日だし、普段だって一分一秒を争うような生活はしてない。
 それに、この家で分からないことがあったら俺に聞けばいいし、やり方を覚えるのはいいけど一緒にやれば早いこともあるだろ。確かに俺はほとんど料理はできないけど、パン焼いたりコーヒー淹れたりぐらいはできる。皿だって洗える」

 二つ目のカップにコーヒーが注ぎ終わって、音が鳴った。

 「だから、何でも一人でやろうとしなくていい」

 一緒に、やる。
 その選択肢はなかった。

 やれることを探して、先回りして動いておく。
 なるべく相手の意向に沿うように、抜かりがないように。

 そうすることでスムーズに物事が運んだし、自分の居場所を確保してきた。

 「返事は?」

 「……はい」

 前にも、こんなやりとりがあった気がする。
 ふわふわの泡がたっぷりのカフェラテを渡されて、清流は素直に受け取った。


 「今の台詞、婚約者っぽいだろ」

 「……正確にはまだ婚約者ではないですから、」

 「はいはい。甘いのがよければ砂糖はそこの引き出しにあるから、適当に入れて」


 軽くあしらうように清流の頭を1回ぽんっとすると、洸は一足先にダイニングへと戻って行く。


 ―――何でも一人でやろうとしなくていい、か。


 洸の言葉が、柔らかな響きで蘇る。
 嬉しさと、少しの気恥ずかしさとで顔が自然と熱い。

 身体を巡る熱をごまかすように、淹れたてのラテを一口飲む。

 まだ砂糖を入れていないのに、その味はどこか甘かった。

< 71 / 259 >

この作品をシェア

pagetop