それらすべてが愛になる
 どうにか徒歩で行くことに納得してもらい、清流は出かけるまでに残った部屋の片付けを終わらせることにした。

 段ボール箱に入れていた服をクローゼットにかけたり、実家の本棚から厳選した本を棚にしまう。

 それから少し大きめの裁縫セット。母の母、元々は清流の祖母が使っていたものだ。母が亡くなった後は私が譲り受けて今も大事に使っている。

 それらを大事に棚へとしまって最後の段ボール箱が空になったとき、部屋のドアがノックされた。


 「そろそろ時間だけど行けそうか?」

 時間を見るともう少しで十一時だった。

 「はい、ちょうど終わりました」

 ふと見ると、洸も上着を着てバッグを持っている。

 「加賀城さんも行くんですか?」

 「駅前まで行くの初めてだろ」

 「そうですけど、ちゃんと行き方は確認したから大丈夫ですよ」

 「一緒だと都合悪い?」

 都合が悪いというよりも、誰か会社の人に見られたら困るというのが本音だ。

 会社の人には婚約者のことは伏せてもらうのだから、万が一休日に二人でいるところを見られたら言い訳ができない。

 すると、何だそんなことかと言った調子で少し不機嫌になりかけていた表情が和らいだ。

 「この辺りで鉢合わせする確率は低いし、もし鉢合わせしたところでまだ清流は人事の一部にしか顔も知られてないんだし、問題ないだろ」

 「そ、そうですかね?」

 「警戒しすぎ。荷物持ちくらいさせろ、行くぞ」

 洸はさっさと玄関へと向かって行くので、清流もバッグを手に取ってその後を追いかけた。

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