それらすべてが愛になる
 駅ビルに着くと、休日だからか多くの人で賑わっていた。

 案内板でキッチン雑貨のお店を探して、エスカレーターで三階へと上がる。

 店内の売り場面積は広く、調理器具の品揃えも充実していた。
 探していたフライ返しはすぐに見つかって、これのことか、と洸は興味深そうに眺めてから買い物カゴへと入れる。

 それからいくつか他の調理器具もカゴに入れてから店内を移動すると、食器売り場も併設されていた。

 「けっこう前に大皿を割ったんだよな。どれか買っとくか」

 洸はそう言って、和食器のコーナーで立ち止まった。

 「キッチンにある食器類は備え付けではないんですか?」

 「あぁ、ここ何年か取引先の結婚式に呼ばれる機会が増えてその引き出物がほとんど。皿とかグラスとかが多いんだよな…あんまりこだわりないからそのまま使ってたけど」

 確かにシンプルだったり柄物だったりと、あまり統一感はなかったことを思い出す。
 とは言っても、そのほとんどが清流でも知っているヨーロッパのブランド物で、そこに自分の作った料理を乗せていいものか躊躇ったけれど。

 「深皿、丸皿、オーバル?種類がありすぎるな…清流はどれがいいと思う?」

 一枚ずつ手に取りながら、急に問いかけられて悩む。

 「そうですね…私は深皿とかいいかなと思いますけど。和食器なので煮物に合いますし、深さもあるのでカレーとかポトフとかにも使えそうです」

 「じゃあこの深皿にするか」

 即決で白と藍色の深皿を一枚ずつカゴに入れたので、思わず驚いてしまう。

 「え、私が決めちゃっていいんですか?」

 「いいも何もそのために聞いたんだけど?これから清流も使うんだし」

 さも当然のように言われて、どう反応していいか戸惑う。これではまるで本当に同棲する恋人同士の買い物みたいだ。

 (って、何考えてるんだろ、私…)

 自分たちはお互いの目的のために一緒にいるだけの、しかも半年という期間限定の関係。
 ここにいる他のデート中らしき男女とは違うというのに。

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