それらすべてが愛になる
 「あら、加賀城くんもう外出?」

 「原材料部が箕輪化学へ交渉に行くからって急遽同行することになった。榊木、何かちょうどいい手土産心当たりない?」

 「箕輪化学ってもしかして田嶋専務?あの人無類のコーヒー好きで甘党だから、コーヒーに合うお菓子がいいんじゃない?」

 「サンキュ、槙野に連絡して用意させる。じゃあ後は頼んだ」

 未知夏がいくつかリストアップしたメモを受け取ると、洸はそのまま慌ただしく部屋を出ていった。

 「今日は午後から取材の予定入ってるのにね、相変わらず忙しい人だわ」

 「取材?そういうのもあるんですか?」

 「そうそう、経済雑誌の取材」

 ほら、と未知夏がキャビネットの中から一冊の雑誌を開いて見せてくれる。

 「あの通り顔がいいからねー、広報部経由でちょくちょく声がかかってる」

 「あ、それ今年の一月のですよね!めちゃキメ顔ですねって言ったら怒られたヤツ」

 からからと笑う二人の横で、清流は雑誌の記事に目を落とす。

 雑誌の見開きで大きく『次世代を担う新しいリーダー像』の見出しとともに、洸の写真が載っていた。

 (この人、今朝の朝ごはんはパンケーキがいいなんて駄々こねてた人と同一人物なんだよね…)

 昨日の夜から今朝はパンケーキが食べたい、と洸からリクエストされていた。

 けれど、今朝はどうしても生地のために粉の分量を計ったりするのが面倒で、じゃんけん勝負の末にピザトーストで済ませたのだった。

 上司としての洸の顔もだいぶ見慣れたが、家での振る舞いとのギャップにはいまだに戸惑うときがある。

 清流は朝食の攻防を頭の片隅に追いやって雑誌も閉じると、代わりに先ほどの指摘内容をメモしたノートをめくった。

< 86 / 259 >

この作品をシェア

pagetop