それらすべてが愛になる
 ◇◇◇◇

 そして翌週の木曜日。
 前日の水曜に資料の提出を終えて、お疲れさま会兼清流の歓迎会が開かれた。

 忙しさで歓迎会が遅れたことを謝られたけれど、清流としてはこうして開いてもらえただけで嬉しいことだ。


 未知夏が選んだのは和風居酒屋のお店で、着いて行くとそこは大きな複合商業施設に挟まれた古い雑居ビルの前だった。

 一階の店舗が酒屋で、地下へと続く階段を降りると暖簾の掛かった引き戸があり、そこを開けるとまるで隠れ家のような空間が広がっている。
 ここは酒屋の息子が開いたお店で、全国の珍しいお酒と料理がリーズナブルな値段で楽しめるのだという。

 席に着いて飲み物を注文すると、飲み物とお通しの二品がすぐに並べられた。

 「姐さんって、元秘書課なだけあって良い店いっぱい知ってますよね」

 「ふふふ、いかにもな高級店より、こういう隠れ家的な雰囲気で良いものを出す店の方がウケがいいのよ。今日は歓迎会だから個室取ったけどカウンター席もおすすめ。焼き場が見えるし店主も面白い人なの」

 乾杯をして清流も一杯目のレモンサワーで喉を潤すと、シュワっと爽快な炭酸が弾けた。
 このお店のレモンサワーは甘すぎず、むしろ少し苦みが効いている。

 これは料理に合いそうだなと思い、さっそくお通しで出された鴨肉の燻製に箸をつける。軽く表面が炙られた鴨肉は、口に入れた瞬間に脂が溶け出してきた。

 次に、見た目にも綺麗な茄子の翡翠煮。
 少し甘めの味付けが清流の好みで、お通しだけで未知夏の言葉を裏づけるには十分な美味しさだった。


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