それらすべてが愛になる
 「あの、経営企画って加賀城さんが作った部署なんですか?」

 清流は今まで何となく疑問だったことを口にする。

 いくら部長とはいえ、そんなに次々よそから人を引き抜いたり、自分のように外部から連れてきて入社させたりと簡単にできるものなのか不思議だったからだ。

 「まぁそうとも言えるかもね……
 私たちが入社して二、三年目の頃ってさ、会社の業績はかなり下降気味だったの」

 主力であるアパレル部門ではそれなりのシェアを誇っていたものの、他社の値下げ攻勢とそれによる消費者の購買行動が変化で年々シェアと利益を下げていた。
 社長を含めた経営層は、他社を追随して値下げを行う傍ら不採算部門は打ち切り、浮いた資金で他業種の買収をさらに進める方へと舵を切ろうとしていた。

 そこに待ったをかけたのが当時営業戦略部にいた洸で、高級ラインの独自ブランドを立ち上げて、競合他社と差別化を図ることを提案した。

 今後、業界の規模はさらに縮小していくという見方が定説な中で、洸の提案は当然反発された。
 が、『シェアが下がるなら一人当たりの購入単価を上げるしかない、薄利多売を繰り返してもパイを食い合うだけで市場は崩壊する』と訴えて、提案を押し切った。維城商事の御曹司の提案に正面を切って『NO』を突き付けられる役員がいなかった、ともいえるが。

 経営企画部が発足したのはブランドの立ち上げプロジェクトが始動した翌年で、そのタイミングで洸も営業戦略部から経営企画部に異動になったらしい。

 「ということは、経営企画部はもともとそのプロジェクトのためだったんですか?」

 「プロジェクトが失敗すれば、上は部門ごと切り捨てるつもりだったんじゃない?加賀城くんも、もし失敗すれば辞める覚悟だったらしいわよ。雑誌のインタビューでは『成功することは分かってた』とかドヤ顔で答えてるけど、それぐらい賭けてたみたい」

 洸には『海外でヒットすれば逆輸入されて国内で売れる』という見立てがあった。

 無名だった日本映画が海外で評価されるとその後国内でヒットするように、海外で人気が出れば国内の購買層が動くと予測したのだ。

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