それらすべてが愛になる
 国内の高品質の繊維や生地を作るメーカーと組んでデザイナーに依頼し、海外バイヤーや展示会へと売り込み、国内よりも先に海外でブランドを展開した。
 それが海外のショーで高く評価されヒットしたことが、日本展開での後押しとなって売上も予想以上に伸びたのだった。

 このブランドは今や維城商事に欠かすことのできない主力ブランドで、高級路線に縁のない清流でも名前だけは聞いたことのあるくらい有名だ。

 そのブランドが確立されるのにこんな経緯があったなんて、想像もしなかった。

 「でも面白いわよね。現社長は他業種に事業を拡大して成功して、その息子はいわば原点回帰、服飾部門で業績回復させたんだから。まぁその辺りでいろいろ衝突することもあるみたいだけど」

 ブランド事業は洸が信頼する人員に任せて完全子会社化され、洸は本社に残って現在の経営企画部を新たに発足させたのが四年前のこと。

 これだけの事業を成功された御曹司である洸に異を唱える者はおらず、そのタイミングで未知夏と唯崎が、その翌年に舞原が経営企画課に引き抜かれたらしい。


 話題が途切れたタイミングで、刺身の五点盛りと串焼きの盛り合わせが運ばれてきた。

 「けど部長って全然隙がないですよねー、何か弱点とか知ってます?」

 舞原が串焼きを取って頬張りながら冗談まじりに言う。

 「弱点?何それ、加賀城くんに勝負でも挑む気なの?」

 「梅干しとわさび、エシャロットが食べれないと聞いたことありますね。あと旬を外れたトリュフが嫌いとか」

 「唯崎さん、それただの嫌いな食べ物じゃないっすか…っていうか最後だけ急にセレブだし」

 舞原がこれ美味いよ、と清流の取り皿に串焼きを置いてくれる。ねぎまのタレとベーコンのトマト巻きだ。

 「でもちょっと分かるわ、意外と味覚が子どもよね」

 「確かに…オムライスとかパンケーキとか好きですもんね?」

 未知夏の言葉につられて、清流も思いついたことを何の疑問もなく口にしていた。
 一瞬その場が止まったような沈黙が流れて、他の三人の視線が自分に注がれる。

 (…あ、しまった!)

 清流はすぐにうっかりしていたことに気づいたものの、すでに遅かった。

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