それらすべてが愛になる
 しばらくして舞原がタバコ、未知夏が仕事の電話のために離席をして、個室には清流と唯崎だけが残った。

 清流は、こうして唯崎と二人になるのは配属されてから初めてだと気づいて、黙々と箸を動かしている唯崎を正面から見る。

 相変わらず表情は乏しいけれど、よく見ると目が丸くて眼鏡を外すと意外と幼いかもしれない。そのせいか、洸や未知夏と同年代なのだろうが、少し年齢不詳な雰囲気があった。

 「あの…唯崎さんは今年で何年目なんですか?」

 「入社したのは五年前ですが、僕は榊木さんたちと違ってプロパー社員ではありません。前職を辞めた後に部長に拾われて入ったようなものです。初めは法務部でしたが、榊木さんと同じタイミングで異動になりました」

 唯崎の回答は簡潔明瞭で、この後いくつか用意していた質問もすべて答えられてしまった。

 会話が途切れて、また沈黙が流れる。

 未知夏たちがいるときは、その場の雰囲気で自分も会話に入れているような気になっていたけれど、実際に二人になると何を話せばいいのか分からない。


 さっきのお礼を言った方がいいのかなと思いつつ、どう切り出したらいいのか迷っていると、沈黙を破ったのは唯崎の方だった。

 「工藤さん、僕は工藤さんの入社の経緯や加賀城部長との関係などおおよその事情については把握しています。なので、僕の前ではあまり気を使わなくても大丈夫です」

 「えっ……?」

 驚いて顔を上げると、日本酒を口につける唯崎と目が合った。

 「工藤さんはそれらについて伏せたがっているが、おそらくボロが出るだろうからフォローするよう部長から頼まれました。工藤さんのプライベートなことは一切伺っていませんし、このことを口外することもありませんので安心してください」

 「えっと、それって…やっぱりさっきのも…?」

 「はい、工藤さんの顔が明らかに『やってしまった』という表情をされていたので。見当違いでしたらすみません」

 「いえ、助かりました…」

 「それならよかったです」

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