それらすべてが愛になる
 やっぱりあれは唯崎の機転だったのだ。

 「あの、すみません、唯崎さんも巻き込んでしまってるみたいで」

 「いいえ、僕自身には特に何も影響はありませんので気にしないでください。ときどき話を聞かされるくらいですから」

 「は、話って、例えばどんな…?」

 「まぁいろいろと…工藤さんは料理がお上手なんですよね、オムライスの話は少し引くくらい嬉しそうにしてましたよ」

 洸の優しさはいつもずるい。唯崎の話を聞いて、清流は嫌でもこの場にいない洸のことを考えずにはいられなくなる。
 でもそれと同時に、勘違いをしてはいけないと気持ちにブレーキがかかる。

 「工藤さん、一つ伺ってもよろしいですか?」

 「?は、はい」

 「結婚されるんですか?部長と」

 「けっ、!?しないです!しませんから!」

 咄嗟にそう返すと、今度は唯崎の方が驚いた顔をした。

 「なぜですか?仕事に関しては高圧的で何かと無理難題を押しつけてきますが、それを除けばかなりの優良物件だと思いますが」

 唯崎の言葉に清流はかぶりを振る。

 「……今はお互いの利害が一致して一緒にいるだけなので。それに半年後には全部解消になりますし」


 今日の話で、今まで掴めていなかった洸という人が少し分かった気がした。

 そして、ずっと清流の中にあった『どうして自分なのか?』という疑問も解けたように思う。


 清流が最初に抱いた印象通り、洸は『良い人』なのだ。

 清流がイタリアで困っていたのを助けたのも、めちゃくちゃな条件で強引に清流を引き入れたのも、唯崎にフォローを頼んだのも。

 前の部署で燻っていた舞原を引き抜いたり、唯崎を引き入れたりしたのと同じように、そういうことを見過ごせない性格で、それが清流ではなく他の女性でもきっと同じようにしたはずだ。


 だから、勘違いしては駄目だと思う。


 (自分だけ特別にされていると、自惚れないようにしないと)


 そうでないと、取り返しのつかないことになる気がした。


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