それらすべてが愛になる
 「で、唯崎は?」

 「まだ財務との打ち合わせから戻ってないです。長引いてるみたいっすね、いただきまーす」

 舞原がコンビニ袋から出したのは、サラダと野菜ジュースのみ。どちらかというと大食いの舞原にしては少なすぎる気がする。

 「昼、それだけで足りんのか?」

 「ちょっと昨日は暴飲暴食しちゃったんで」

 野菜ジュースにストローを刺しながら笑う舞原を見て、昨日は清流の歓迎会だったと思い出す。

 洸は日帰り出張で不参加だったが、昨夜マンションに着いたとき清流はまだ帰っていなかった。

 珍しく清流から連絡があり『皆さんと二次会に行ってきますね』とのメッセージに『遅くなるならタクシーで帰れよ』と返したのが夜の十時になる少し前。

 清流とのメッセージのやりとりには、彼女が意図的にそうしているのだろうが業務連絡の延長のようで常に一定の距離がある。

 それが昨日は、ほどなくしてポンっと猫が敬礼をするポーズのスタンプが返ってきた。

 それを見て、清流が明らかに酔っているだろうことが分かった。
 垣間見えた素の彼女に、呆れると同時に少し笑いがこみ上げたのを洸は覚えている。

 「どうしたんすか?」

 「別に」

 洸の口角がわずかに上がったことに舞原は気づいたが、洸の空返事を聞いて肩をすくめると、昨日の居酒屋はよかったですよ、とあっさりと話題を切り替えた。

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