優しくしないで、好きって言って
襟足のさっぱりとしたセンターパートの黒髪。
スッと筋の通った高い鼻。
キリッと整った、薄い平行二重の目。
どうしようもなく胸がざわめき立つのは、どうしてなんだろう。
ただ心を纏う、どこか懐かしい──。
「七瀬?」
──はっ。
「っ、なに?」
「あ……七瀬ったら、見惚れちゃってた? やばいよねぇ。黒髪の人すっごくイケメンだし、茶髪の人も笑顔可愛いかんじでさぁ」
「……う、うん」
「よねよねー!」
実玖留には悪いけど、今の私にはちゃんと返事できる思考能力は残されていなかった。
そんなことあるはずがないのに。
ふと脳裏に浮かんだ〝ありえないそれ〟のせいで、心が妙なほど落ち着かないんだ。