優しくしないで、好きって言って

 ……そう、きっと気のせいよね。そんなおかしなこと考えちゃうなんて、バカみたい。

 今朝あんな夢見ちゃったから。

 だからたぶん、そう思ってしまっただけ。


 でも……もし。

 もしも本当にそうなら……? 

 
 ごくりと息を呑む。と、その時。


「あ、自己紹介します! 俺が篠原(しのはら)元輝(もとき)で。こっちが……」


 明るく声を飛ばした、茶髪の彼。

 同時にその手が示した右隣に、一斉に視線が集まる。


 そうして心の準備もままならないうちに、見つめる先の唇がそっと動いた。



綾城(あやき)瑛大(えいた)です。よろしく」

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