優しくしないで、好きって言って
「……くっそ、なんなのほんと」
ぼやける視界の中、小さく吐き捨てられた言葉。
次第に鮮明になっていく黒の途中で、私はふと気づいてしまったんだ。
「……あれ? もしかして、照れてる……?」
「うっせぇ」
手で口元を隠しながら視線を逸らすその人を濡れた目でじっくりと見回す。
ついさっきまで涙が止まらなかったはずなのに、顔が緩んで仕方がない。
こんな珍しい瑛大、きっとなかなか見られないんだもん。
新鮮な感じがして、なんだかちょっと嬉しいかも。
「……後で覚えてろよ」
「何か言ったー? 瑛ちゃん」
「別に。それより、これから七瀬ん家行っていい?」
「へっ」
いきなり飛んできた思わぬ質問に、間抜けな声を洩らしてしまった。
「いい、けど……」
ん。待ってよ、私の家にって……。
ふと考え出した途端、脳内にぶわっと色んな感情が押し寄せてきた。