優しくしないで、好きって言って

 程なくして俺は、親父と母さんに連れられアメリカへ渡った。

 そこで親父はどんどんと名を馳せていき、現地の医者に負けない偉大な存在となっていった。

 異国の地でも活躍する親父の姿が、俺にはとてつもなく眩しく見えた。

 その眩しさに触発されたように、俺は異文化の中で必死に勉強を始めた。

 勉学だけじゃなく、幼い頃から身につけていた礼儀作法を磨き上げ、進んで世渡りの術を覚えた。


 綾城の名を汚してしまわないように。


 その頃からだったかな。

 はっきりと、俺も親父みたいな医者になりたいと思い始めたのは──。

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