優しくしないで、好きって言って

 それから、毎日のように七瀬と話すようになった。

 俺の、初めての友達だった。


 七瀬に出会って、俺の心は見るからに変わった。

 一人で生きて行くはずが、いつしか一人じゃなくなっていた。


 そして月日は流れ、小学3年になった頃──。人生における、大きな転機が訪れた。


『瑛大、アメリカへ行くことになった』


 久々に聞いた親父の声は、まるで想像もしていなかった言葉だった。

 医療技術を学ぶため、数年間アメリカの病院で働くことが決まったという話だった。

 それに、俺も母さんもついていくと。


 この時最初に浮かんだのが、七瀬の顔だった。七瀬にだけはどうしても、ちゃんと伝えたいと思った。


 明るくて、活発で、気が強くて。

 だけど本当はすごく繊細で、優しくて、寂しがり屋。


 そんな七瀬のことを、自分でも気づかないうちに好きになっていたんだ。

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