優しくしないで、好きって言って

「瑛大くんは未来の息子なんだから、どんどん甘えてちょうだいね」

「ありがとうございます」

「ふふっ、いいのよいいのよ」


 ……ダメだ。

 完全に私、アウェイだ。


「竜くんいるー?」


 自らの敗北を悟ったところで、ママが凛とした声を遠くへ飛ばした。

 するとすぐ、コンコンコンと規則的なノック音が3回鳴り響いて。


「失礼します。こちら、奥様に頼まれたお品物です」

「竜くんありがとう」

「いえ……」


 竜くんこと竜胆は手に持っていた袋をママに渡すなり、ちらりと瑛大の方を向いた。そして。


「はじめまして。七瀬さん専属のお世話係を務めております、久栖(くすみ)竜胆(りんどう)と申します」


 そう、にこやかな表情で名乗ったあと、礼儀正しくきっちりとお辞儀をしてみせた。

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