優しくしないで、好きって言って
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「あれ、瑛大……」
お風呂から上がってリビングへ入ると、一人ソファに座るその姿を見つけて、思わずドキッとした。
先にお風呂に入ってもらったから、瑛大は竜胆が買ってきたスウェット姿だ。
前髪も、普段のセンターパートとは異なり下りたままになっている。
「おかえり」
「うん……ただいま。部屋、行ってなかったのね」
……なんかまだ変な感じ。
ここに、こんな時間に、瑛大がいるなんて。
──本当に瑛大、今日この家に泊まっていくのよね?
承諾云々は別にして、仮にも瑛大は私の許婚で、昔好きだった人。
意識しないなんて到底無理な話だ。
いつもはリラックスできる湯船の中も、全然気が休まらなくて。
私の鼓動はずっと激しく鳴りっぱなしだった。
そのせいでいつもより少し長風呂になってしまったなんて、どうかバレてなきゃいいけど……。