優しくしないで、好きって言って

***



「あれ、瑛大……」


 お風呂から上がってリビングへ入ると、一人ソファに座るその姿を見つけて、思わずドキッとした。

 先にお風呂に入ってもらったから、瑛大は竜胆が買ってきたスウェット姿だ。

 前髪も、普段のセンターパートとは異なり下りたままになっている。


「おかえり」

「うん……ただいま。部屋、行ってなかったのね」


 ……なんかまだ変な感じ。

 ここに、こんな時間に、瑛大がいるなんて。


 ──本当に瑛大、今日この家に泊まっていくのよね?


 承諾云々は別にして、仮にも瑛大は私の許婚で、昔好きだった人。

 意識しないなんて到底無理な話だ。

 いつもはリラックスできる湯船の中も、全然気が休まらなくて。

 私の鼓動はずっと激しく鳴りっぱなしだった。


 そのせいでいつもより少し長風呂になってしまったなんて、どうかバレてなきゃいいけど……。

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