優しくしないで、好きって言って

「なんか、ごめんね。強引に……こんなことになっちゃって」


 ドキドキを隠しつつ、濡れた髪をタオルで拭きながら言う。


 許婚の母親にあそこまでされたんだもん。瑛大も断るに断れなかったよね。

 なんて思っていたのに。


「いや……逆に、嬉しかったよ」


 その時捉えた瑛大の顔は、私の予想とは正反対の表情をしていた。


「嬉しかった?」

「ああやってみんなで話しながら食事したの、久々だったしさ。……いいお母さんだよな、七瀬のお母さんって」

「……うん」


 顔を見たら、本心から言ってるんだろうなってわかった。

 ……嬉しいな。思い立ったらすぐ強行突破しちゃうちょっと困ったママだけど、私はそんなママが大好きだから。


 というか……。

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