優しくしないで、好きって言って
おかえり





「うん、俺も話したいと思ってた」


 じっと見つめる私に返ってきたのは、そんな柔らかな言葉だった。


 ……よかった。

 ほっと一息ついて、私は瑛大をソファに横並びに座るよう誘導する。

 そして。


「あのっ」


 まずはどの話をしようか。

 いざ口を開いたのはいいけれど、候補が多すぎるせいか上手く頭が働いてくれない。


 ただゆったりと流れる時。

 秒針の音だけが、静かに広い空間に響きわたる。

 そんな中、私は何とか絞り出した想いを胸に唇を動かした。


「髪飾り、ありがとう」


 昨日もらったそれ。

 まだ、お礼も言えてなかったから。

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