九條くんと、15分。
「……なるほどねぇ」

八愛ちゃんの声で、ふと現実に戻る。
危ない、あの日の九條くんがかっこよすぎて、あちらの世界から戻って来られなくなるところだった。

「で?……好きになった理由は分かったけど」

八愛ちゃんがじっと私を見る。

「それで、いつまで見てるの?」

「え?」

八愛ちゃんの言葉に、今度は私が首を傾げる。
いつまで……って言われても、考えたこともなかった。


「……ずっと?」

「いや、聞く相手間違えたわ」

「えぇ、なんで!?」


八愛ちゃんが短くため息をついて笑う。


「だって茜、付き合いたいとか思わないの?」

「……思わない」

「本当に?」

「うん」


だって、相手は九條くん。
九條くんは告白されても全部断っちゃうって有名だし!

あの整った顔に見つめられでもしたら、吐血する。

私と九條くんが釣り合わないのも理解済みだ。


それに──。

「九條くんが幸せならそれでいい」

「……」

「私、九條くんのことは好きだけど」

胸の奥が少しだけくすぐったくなる。


「自分が幸せにしたい!じゃなくて、好きだから幸せでいて欲しいな!って。九條くんの幸せ=私の幸せ、的な」


八愛ちゃんが、ほんの少しだけ寂しそうな顔をする。

「茜ってさ」

「うん?」

「たまに、すごく変なところで遠慮するよね」

「……そう、かな?」

「もっと自分に自信持ってよね!?茜は十分ヒロイン級なんだから」

「ヒロイン級って」


八愛ちゃんの熱量がすごくて思わず笑えば、「こっちは本気で言ってんのに!」と、少し怒られてしまった。


いいの、いいの。

九條くんを好きになって、朝15分の癒しタイムに色んな九條くんを知れた。

私は毎日十分、幸せなんだから。
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