エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
「いや、まだいるんですね、ああいう人……」
 その人は眉間に軽くシワを寄せて5Aシートの方を見ていた。一方で莉桜たちはいろんなお客様がいることに慣れている。莉桜は助けてくれた男性に笑顔を向けた。同意したいのはやまやまだがそういうわけにはいかない。
「ありがとうございます。お仕事での渡米ですか?」
「そう。到着したらすぐに現地の会社に向かわなくてはいけない」
「ではそれまでごゆっくりお過ごしいただけますように。なにかあれば仰ってください」
「ありがとう」

 莉桜は彼がシートに戻るのを見届け、ギャレーに戻り片付けを済ませたあとに今の出来事を大島に報告する。
「そんなことがあったの……気づかなくてごめんなさいね。で、お声をかけてくださったのはどちらのシートのお客様?」
「9Dのお客様でした」
「お礼をお伝えしましょう。倉木さんも一緒に来て」
「はい」

 大島に言われて莉桜は後をついて、9Dのシートに行く。大島が控え目に閉まっている扉を軽くノックした。
「お客様、恐れいります。少々よろしいでしょうか?」
「はい」
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