エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 明日からの二日間はその訓練だった。
 訓練はさまざまで、安全のための訓練の他、サービスの訓練も行う。
 莉桜たちは年に何回か訓練を実施することで空の安全を確保したり、サービスの向上に努めているのだった。

 ──新型機導入訓練。
 莉桜はその文字をじっと見つめる。
 ヒーローで紳士でちょっとだけ意地悪な人をつい思い浮かべてしまう。
(訓練、頑張ろう)
 莉桜はコーヒーのカップを片付けると、本を手にしてレジへと向かった。

 出社した莉桜はロッカールームでつなぎ服のクリーニングの袋を破く。
 ここはJSA本社から少し離れた場所にある訓練施設だった。
 専用の訓練施設はサッカー場が四つ入ってもさらに余裕があるほどの広さを誇っていて、パイロットから莉桜たち客室乗務員、またグランドスタッフや整備士までもが訓練を受けられる施設となっている。

 サービスの訓練の時は制服で訓練をするが、今回は安全訓練なのでつなぎ着用だ。
 訓練も内容によって全く違うが、この安全訓練は客室乗務員がお客様の命を守るものであるという自覚を毎回強く認識させられて、莉桜は気が引き締まる。
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