エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 十八時過ぎに五十里からメッセージがきて『一時間後程にマンションの下で』と連絡があった。
 いつもはきっちりとまとめているロングヘアだが、今日はコテで巻いてふんわりとさせている。メイクも明るめのカラーとラメでいつもよりも華やかな印象だ。

(五十里さん、似合うって思ってくれるかな?)
 胸を高鳴らせながら莉緒は準備を済ませた。
 一時間後にマンションの前まで降りていくと、程なくして黒塗りの車が停まる。
 後部座席から出てきたのは五十里だった。昨日お迎えに来てくれた時は自分で運転してきていたが、今日は運転手付きの車らしい。

「お疲れ様です」
 近寄ってきてくれた五十里に笑顔を向けると、五十里も笑顔を返してくれる。
「お疲れ様」
 自然な動作で後部座席のドアを開けてくれた。手のひらで座席を示されて「失礼します」と莉緒は後部座席に座る。いつも五十里は紳士だ。

隣に五十里が乗ってくる。
「ではソシアルグランドホテルまで」
 五十里が運転席に向かって言うと「承知しました」と返ってくる。
 それから運転席と後部座席の間は自動のパーテーションで仕切られた。プライベートを確保できるようになっているらしい。

「今日はご自分の車ではないんですね?」
「そう。専属の運転手ではあるけれどもね。食事はソシアルグランドだが、それでよかったかな?」
 よかったもなにも、ソシアルグランドホテルは五つ星のホテルだ。
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