エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
「そんなの……いいに決まっています」
「いや、莉緒は客室乗務員だし、こうやって誘われることも多いのかと思って」
「お声はかけていただきますけど、一緒に行くことはないですよ」
 確かに客室乗務員は機内で声をかけられることもなくはない。一緒に現地で食事に行きませんかとか、名刺をもらったりすることもある。
 だからといって気軽にお客さまと出かけるなんて思われると困る。

「そうなのか?」
 五十里は意外そうな顔をしていた。莉緒はやり返すことにする。
「五十里さんだって街中でお声をかけられることが多いんじゃありませんか? 誰彼構わず一緒にお食事へ行かれるんですか?」
 一瞬目を見開いた五十里はそれを聞いて笑い出した。

「それはそうだな。君の言う通りだ。俺だって気軽には行かない。ではお客様とはこうして出かけることはないんだな」
「ないです。ステイ先でも会社の同僚か……同僚が都合悪い時は一人でふらっとお店に入ることもありますよ」
「一人で? それはすごいな。女性だと一人で店に入ることすらできない人もいると聞くが」
「私は割と平気です。CAは独り歩きも平気な人、結構多いですよ」

 実際にステイ先などでは同僚と一緒でなくてもさっさと予定を決めて現地の名所を回ってしまう人なんかもいる。
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