エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 一緒にフライトをするのは毎回違うメンバーなので必ずしも気が合う人と一緒になるとは限らない。だから客室乗務員は一人で行動することにも慣れているのだ。

「莉緒も?」
「はい。私も。知らない街を独り歩きするのも結構楽しいです」
「本当に君は頼もしいな。いつか君と旅行にも行きたいよ」
「もう、すごーく綿密に予定を立てることもありますし、行き当たりばったりも得意です」
 五十里はきゅっと莉緒の手を繋いだ。
「莉緒と一緒にいると本当に楽しい」

 そう言って五十里は嬉しそうに笑っている。手のぬくもりに加えて無邪気な笑顔が本当に魅力的で、莉緒はそんな姿に胸が締め付けられる心地だった。
「莉緒と一緒に、どこかに行きたいな」
「いつか行きましょう」
「いつか、な。それを楽しみにしていよう」
 そう言うと五十里は莉緒の肩を抱いて軽く引き寄せた。

「到着いたします」
 甘い雰囲気になったところだったが、パーテーションが降りて運転手がそう声をかけてくる。
「分かった」
 五十里はそっと莉緒から離れると頭を撫でた。
「本当に愛おしいよ」

 莉緒もそれは同じだ。一緒にいればいるほど、五十里は胸の高鳴る存在になる。
 本当にいつか五十里と一緒に旅に行くことができるのなら、行ってみたかった。
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