エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 溺愛を勘違いして意図せず変わっていってしまう女性もいた。どんどんとわがままになり調子に乗っていくのを諌める頃には五十里はその関係性にうんざりしていた。
 また「重いのよ」とキッパリ言われて、逃げられたこともある。そうなのか……と納得しただけだ。

 言うなれば溺愛体質。
 それを満足させてくれる女性に出会ったことはまだなかった。
 そんなことをつらつらと考えていると搭乗案内が開始される。
 ──いつか、一緒に綺麗なものを見られる女性に出会いたいものだ。
 五十里はスーツケースを引いて、プライオリティゲートに向かったのだった。
 

「わーいっ!飛行機だぁ」
 タラップを歩く五十里の後ろから男の子が走ってきて追い越していった。
「こうちゃん、走らないで!」
 こうちゃんと呼ばれた男の子の後ろを母親がついて行く。五十里を追い越して行くときに頭を下げていった。

 微笑ましい気持ちで五十里はそのようすを見ていた。飛行機にはしゃぎたくなる気持ちは分かるし、それは見ていて航空関係者の端くれとしても嬉しいことだった。
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