エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
「本日も安全運航でいきましょう。よろしくお願いいたします」
 貴堂が低くて優しい声で言うと「よろしくお願いいたします」とみんなが応えた。

 そして一斉に機内へと入っていく。機内にはもうグルーマーと呼ばれる清掃のクルーが入っていてお客さまの席を綺麗にしていた。
「おはようございます」
 挨拶しながら中に入り荷物を置いて、莉桜は即座に安全確認の準備を始める。

 機内にチーフパーサーの声が響いた。機内アナウンスだ。
『十六時には搭乗を開始したいと思います。それまでに準備をお願いいたします』
 莉桜は腕時計を見た。時計は十五時を過ぎたところだ。一時間もあれば余裕かと思うとそうでもない。思った以上にやることがあるので、この時間だとギリギリだ。

「モニターチェックします」
 莉桜が上げた声に先輩が反応する。
「お願いいたします」
 モニターは安全確認を行うための大切な機器だ。故障していたり、見えていないものがあると困る。

 莉桜はビジネスシートの一つ一つを覗き込んで、見えていないものがないか、消えているもの、不具合はないかを確認する。
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