本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
川口直人 66
――午前10時
あれから4日が経過していた。
結局もう鈴音に連絡する事をやめてしまった。それは毎日常盤恵利からスマホチェックを受けるようになってしまったからだ。こんな状態では電話をかけるなど、到底無理だった。
そして今……俺は全ての荷物を運び出し、がらんどうになってしまったマンションにひとりでいた。
既に荷物は実家近くの賃貸マンションを借りて、そこに全て送ってある。
今、ここに残っているのは鈴音に最後の別れのメッセージを残すためだ。
スタンドにスマホをセットすると映り具合を確認する。
「……よし、こんなものか……」
そして鈴音に残す最後の動画メッセージを撮影し始めた――
****
「……っ……」
画像の録画を終えると溢れ出ていた涙を袖で拭った。
どんなに拒絶しても、2月には心底憎むあの女と結婚しなければならない。それが決定したのは昨夜の事だった。もう自分が逃げることが出来ない立場に追いやられている事を悟った。
そこで鈴音に動画を残そうと思ったのだ。
いずれにしろ鈴音は遅かれ早かれ、異常な事態に気付くだろう。そしてこの部屋に入ってくるはずだ。
荷物が全て消え失せているこの部屋を目にした時…‥鈴音はどう感じるだろう。
俺の事を憎むだろうか?
それとも忘れようとするだろうか?
出来れば鈴音には一生憎まれたい……そうすればいつまでも鈴音の心の中に、俺の記憶が刻まれるだろうから。
どんなに憎まれても忘れて貰いたくなかった。
それほどまでに……鈴音の事を愛していたからだ。
せめて、もう一度。一目だけでも会いたい。だけど、もう二度とそれは叶わないのだ。
「鈴音……。ごめん……鈴音……」
俺は……誰もいない部屋で暫くの間、鈴音を思って泣き続けた――
*****
それは動画を撮影してから数日後のある夜の出来事だった。
トゥルルルル……
突然俺の電話が新居のマンションに響き渡った。
スマホを手にし、思わず目を見開いた。
ついに……待ち望んでいた電話がかかってきたのだ!
「もしもし……」
緊張する面持ちで電話に出た途端……。
『お前……鈴音に何てことしてくれたんだよ!』
その電話はあいつ――鈴音の幼馴染からだった。
そうか……。やはり鈴音と一緒にマンションへ行ったのか……。
もうこうなったら、この男だけが頼りだった
「ごめん……分かっている。だけど、電話くれて良かった……。実は待っていたんだよ」
『え……? お前……一体何言ってるんだよ?』
電話口であいつは珍しく戸惑った様子で尋ねてきた。
「俺の身に何があったか全て話すから……どうか鈴音には何も言わないでくれないか?」
『どういう事だよ……?』
「あまり細かいことは話せない。だから外で会えないか? なるべく早めに都合をつけてくれると助かる」
『俺の勤務地は新宿だ。明日なら直帰出来る』
「分かった、なら明日19時。新宿西口の改札前で待ち合わせ出来るか?」
『ああ、いいぜ。ただし……わざわざ外で会うんだ。洗いざらい全て白状して貰うからな』
「勿論だ。それじゃ明日」
こうして、俺はあいつと会う約束を取り付けることが出来た――
あれから4日が経過していた。
結局もう鈴音に連絡する事をやめてしまった。それは毎日常盤恵利からスマホチェックを受けるようになってしまったからだ。こんな状態では電話をかけるなど、到底無理だった。
そして今……俺は全ての荷物を運び出し、がらんどうになってしまったマンションにひとりでいた。
既に荷物は実家近くの賃貸マンションを借りて、そこに全て送ってある。
今、ここに残っているのは鈴音に最後の別れのメッセージを残すためだ。
スタンドにスマホをセットすると映り具合を確認する。
「……よし、こんなものか……」
そして鈴音に残す最後の動画メッセージを撮影し始めた――
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「……っ……」
画像の録画を終えると溢れ出ていた涙を袖で拭った。
どんなに拒絶しても、2月には心底憎むあの女と結婚しなければならない。それが決定したのは昨夜の事だった。もう自分が逃げることが出来ない立場に追いやられている事を悟った。
そこで鈴音に動画を残そうと思ったのだ。
いずれにしろ鈴音は遅かれ早かれ、異常な事態に気付くだろう。そしてこの部屋に入ってくるはずだ。
荷物が全て消え失せているこの部屋を目にした時…‥鈴音はどう感じるだろう。
俺の事を憎むだろうか?
それとも忘れようとするだろうか?
出来れば鈴音には一生憎まれたい……そうすればいつまでも鈴音の心の中に、俺の記憶が刻まれるだろうから。
どんなに憎まれても忘れて貰いたくなかった。
それほどまでに……鈴音の事を愛していたからだ。
せめて、もう一度。一目だけでも会いたい。だけど、もう二度とそれは叶わないのだ。
「鈴音……。ごめん……鈴音……」
俺は……誰もいない部屋で暫くの間、鈴音を思って泣き続けた――
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それは動画を撮影してから数日後のある夜の出来事だった。
トゥルルルル……
突然俺の電話が新居のマンションに響き渡った。
スマホを手にし、思わず目を見開いた。
ついに……待ち望んでいた電話がかかってきたのだ!
「もしもし……」
緊張する面持ちで電話に出た途端……。
『お前……鈴音に何てことしてくれたんだよ!』
その電話はあいつ――鈴音の幼馴染からだった。
そうか……。やはり鈴音と一緒にマンションへ行ったのか……。
もうこうなったら、この男だけが頼りだった
「ごめん……分かっている。だけど、電話くれて良かった……。実は待っていたんだよ」
『え……? お前……一体何言ってるんだよ?』
電話口であいつは珍しく戸惑った様子で尋ねてきた。
「俺の身に何があったか全て話すから……どうか鈴音には何も言わないでくれないか?」
『どういう事だよ……?』
「あまり細かいことは話せない。だから外で会えないか? なるべく早めに都合をつけてくれると助かる」
『俺の勤務地は新宿だ。明日なら直帰出来る』
「分かった、なら明日19時。新宿西口の改札前で待ち合わせ出来るか?」
『ああ、いいぜ。ただし……わざわざ外で会うんだ。洗いざらい全て白状して貰うからな』
「勿論だ。それじゃ明日」
こうして、俺はあいつと会う約束を取り付けることが出来た――