本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
川口直人 79
――ピンポーン
インターホンを押す音が聞こえ、扉を開けると現れたのは和也だった。
「来たよ」
「ああ、悪いな。上がれよ」
「うん、お邪魔します」
和也はスニーカーを脱ぐと上がり込んできた。
「へ~相変わらず兄ちゃんは綺麗好きだな~」
和也は部屋に入るなり、キョロキョロと部屋の中を見渡した。
「そうか? まぁ座れよ。今コーヒー入れるから」
「うん、サンキュー」
和也はローソファに座ると、キッチンに立つ俺に話しかけてきた。
「なぁ、兄ちゃん」
「何だ?」
やかんに水を入れて沸かしながら返事をする。
「この部屋にもう婚約者は来てるの?」
「は!? 冗談じゃない! 誰があんな女部屋にあげるか!」
「え!? マジか!」
和也は大げさな位に目を見開く。
「そんなに驚く事か?」
マグカップにドリップコーヒーをセットしながら聞き返した。
「当たり前じゃないか。仮にも婚約者だろう?」
「……俺は認めていない。勝手に婚約させられただけなんだからな」
沸いた湯をドリップバッグに注ぎながら返事をする。
「あのさぁ……確かに勝手に婚約させられたかもしれないけど、それでも一応婚約者なんだからそんな言い方はまずいと思うよ?」
「……」
俺は無言でお湯を注ぐ。だったらお前が代わりに常盤恵理の婚約者になってくれと言いたいところだが、そこはぐっと我慢した。すると和也が申し訳なさ気に声をかけてくる。
「ごめん……もしかして怒ったかな?」
「い、いや。別に怒っていないよ。悪かったな……確かに和也の言う通りだよ。だけど……」
溜息をつきながら、コーヒーを注ぎ終わった2人分のマグカップを持って部屋に移動すると、和也のテーブルの前に置いた。
「サンキュー。いい香りだな~」
和也はクンクン匂いを嗅ぎながら笑みを浮かべる。
「そうだよな。お前は色々な飲食店でアルバイトしてるから……コーヒーには敏感だよな」
「別に敏感て訳じゃないけどね……。うん、美味い」
和也はコーヒーを飲むと満足げに頷く。
「和也。それで早速伝えておきたい事があるんだが……」
「うん、分ってるよ。取りあえず彼女の写真見せてよ」
「あ、ああ……」
あらかじめ用意しておいた3枚の写真を和也の前に並べた。
写真の中の鈴音はどれも笑顔だった。ここにある写真だけは現像していたので、常盤恵理から守ることが出来たのだ。
「へ~この人が鈴音さんか……とっても綺麗な人じゃないか。これじゃ兄ちゃんが夢中になるのも無理はないな~」
和也が鈴音の写真をじっと見つめている。
「あのな、別に俺は鈴音の顔だけに惹かれたわけじゃないからな?」
「そんなの分ってるって。でも、ほんとに美人だな~芸能人だって言われても信じるレベルだよ。いや、その辺のアイドルよりずっといいな。この写真1枚貰えない?」
「おい、何言ってるんだ? 駄目に決まってるだろう?」
「冗談だって。真に受けるなよ。それで? もう1人……男の方の写真は?」
「馬鹿言うな。持ってるはずないだろう?」
何故俺が岡本の写真を持っていなければならないんだ? 考えただけで不愉快になってくる。
「え!? それじゃ岡本って人が仮にファミレスに来ても分らないじゃないか」
「別に岡本の事は気にしなくていいんだよ。要は仮に……お前のアルバイト中に鈴音が来たら、さり気なく気に掛けて貰いたいだけの話だから」
「まぁ、別にいいけど……でも期待しないでくれよ? 鈴音さんて人が俺がアルバイト中に客として来るなんて限りなくゼロに近い確率だからな?」
「……ああ。それでも別に構わないさ」
そうだ。鈴音が和也のバイト中に現れるとは限らないけど、それでも構わなかった。
何故なら今の俺には鈴音を見守ることすら許されないのだから――
インターホンを押す音が聞こえ、扉を開けると現れたのは和也だった。
「来たよ」
「ああ、悪いな。上がれよ」
「うん、お邪魔します」
和也はスニーカーを脱ぐと上がり込んできた。
「へ~相変わらず兄ちゃんは綺麗好きだな~」
和也は部屋に入るなり、キョロキョロと部屋の中を見渡した。
「そうか? まぁ座れよ。今コーヒー入れるから」
「うん、サンキュー」
和也はローソファに座ると、キッチンに立つ俺に話しかけてきた。
「なぁ、兄ちゃん」
「何だ?」
やかんに水を入れて沸かしながら返事をする。
「この部屋にもう婚約者は来てるの?」
「は!? 冗談じゃない! 誰があんな女部屋にあげるか!」
「え!? マジか!」
和也は大げさな位に目を見開く。
「そんなに驚く事か?」
マグカップにドリップコーヒーをセットしながら聞き返した。
「当たり前じゃないか。仮にも婚約者だろう?」
「……俺は認めていない。勝手に婚約させられただけなんだからな」
沸いた湯をドリップバッグに注ぎながら返事をする。
「あのさぁ……確かに勝手に婚約させられたかもしれないけど、それでも一応婚約者なんだからそんな言い方はまずいと思うよ?」
「……」
俺は無言でお湯を注ぐ。だったらお前が代わりに常盤恵理の婚約者になってくれと言いたいところだが、そこはぐっと我慢した。すると和也が申し訳なさ気に声をかけてくる。
「ごめん……もしかして怒ったかな?」
「い、いや。別に怒っていないよ。悪かったな……確かに和也の言う通りだよ。だけど……」
溜息をつきながら、コーヒーを注ぎ終わった2人分のマグカップを持って部屋に移動すると、和也のテーブルの前に置いた。
「サンキュー。いい香りだな~」
和也はクンクン匂いを嗅ぎながら笑みを浮かべる。
「そうだよな。お前は色々な飲食店でアルバイトしてるから……コーヒーには敏感だよな」
「別に敏感て訳じゃないけどね……。うん、美味い」
和也はコーヒーを飲むと満足げに頷く。
「和也。それで早速伝えておきたい事があるんだが……」
「うん、分ってるよ。取りあえず彼女の写真見せてよ」
「あ、ああ……」
あらかじめ用意しておいた3枚の写真を和也の前に並べた。
写真の中の鈴音はどれも笑顔だった。ここにある写真だけは現像していたので、常盤恵理から守ることが出来たのだ。
「へ~この人が鈴音さんか……とっても綺麗な人じゃないか。これじゃ兄ちゃんが夢中になるのも無理はないな~」
和也が鈴音の写真をじっと見つめている。
「あのな、別に俺は鈴音の顔だけに惹かれたわけじゃないからな?」
「そんなの分ってるって。でも、ほんとに美人だな~芸能人だって言われても信じるレベルだよ。いや、その辺のアイドルよりずっといいな。この写真1枚貰えない?」
「おい、何言ってるんだ? 駄目に決まってるだろう?」
「冗談だって。真に受けるなよ。それで? もう1人……男の方の写真は?」
「馬鹿言うな。持ってるはずないだろう?」
何故俺が岡本の写真を持っていなければならないんだ? 考えただけで不愉快になってくる。
「え!? それじゃ岡本って人が仮にファミレスに来ても分らないじゃないか」
「別に岡本の事は気にしなくていいんだよ。要は仮に……お前のアルバイト中に鈴音が来たら、さり気なく気に掛けて貰いたいだけの話だから」
「まぁ、別にいいけど……でも期待しないでくれよ? 鈴音さんて人が俺がアルバイト中に客として来るなんて限りなくゼロに近い確率だからな?」
「……ああ。それでも別に構わないさ」
そうだ。鈴音が和也のバイト中に現れるとは限らないけど、それでも構わなかった。
何故なら今の俺には鈴音を見守ることすら許されないのだから――