本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
川口直人 83
仕事からマンションに帰宅したのは20時を過ぎていた。帰って来ると風呂に入り、スウェットに着換えてエプロンをしめるとキッチンに立ち、手早く料理を始めた。
今夜の料理はミートソースパスタだ。ミートソースは仕事が休みの日にまとめて作り置きし、小分けして冷凍保存してある。それを取り出すと、パスタをゆで始めた。その間にレタスをちぎり、キュウリをスライスして皿にもりつけて、ミニトマトを添える。次にミートソースをレンジで加熱している間にパスタの湯で具合を確認する。
「……よし、こんなものか」
パスタの湯を切って、深めの皿に入れて温めたミートソースを掛けると、トレーにサラダとパスタを乗せて部屋へと運ぶ。
テーブルの上にトレーを乗せるとすぐにテレビをつけて食事を開始した。
テレビはあまり面白くも無いバラエティ番組をやっている。
鈴音と交際していた頃はあまりテレビをつけたことは無かった。2人で向き合って料理を食べ……会話を楽しんだ。
あの頃は本当に幸せだった。鈴音が俺の全てだった。
いずれ結婚して、可愛い子供に恵まれ……幸せな生活がずっと続くと思っていたのに、常盤家によって俺達は引き離されてしまった……。
「鈴音…」
食事をしながら思わずポツリと呟く。今頃鈴音はどうしているのだろう……。
鈴音が夢に出てこない日は無かった。夢の中では幸せだった。しかし朝目が覚めると、残酷な現実が待っている。
愛する鈴音が手の届かない場所にいると言う、悲しい現実が――
これから俺は常盤恵理に電話を掛けなければならないのに、鈴音の事ばかり考えていた。
「……御馳走さま」
1人きりの食事を終え、食べ終えた食器を持ってキッチンへ向かうと後片付けを始めた。
全ての食器をや調理器具を洗い終えて、冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出して再び部屋に戻るとプルタブを開けた。
プシュッ!
音を立てて蓋が開くと、ビールを煽る様に飲んだ。……これから憂鬱な相手に電話を入れなければならないのだ。とてもシラフの状態では電話など出来そうに無かった。
「ふぅ~…」
トン
ガラステーブルの上に飲み終えた缶ビールを置くと、スマホに手を伸ばし……ため息をつきながら常盤恵理に電話を掛けた。
トゥルルルルル…
トゥルルルルル…
「……出ないな……」
結局5コール目まで待っても電話に出る気配は無かったので電話を切ると、2本目の缶ビールを取りに行く為に立ち上がった時、不意に着信音が流れてきた。着信相手を見ると、案の定常盤恵理からだった。
「参ったな……」
渋々スマホをタップした。
「もしもし……」
『もしもし、直人? 今電話したでしょう?』
「ああ、したよ」
『何ですぐに電話を切ったのよ』
「は?」
聞き捨てならないことを言われた。
「どこがすぐになんだ? 5コール待って出なかったから電話を切っただけじゃないか」
『たったの5コール目でしょ! しかも何よ! 仮にも婚約者である私に2週間以上も電話してこなかったじゃないの! 始めに言ったわよね? 毎日1日2回掛けてくるようにって!』
そう言えば、そんな約束をさせられていたけれども……鈴音に嫌がらせを働いた事を知り、もう電話を掛ける気力は無くしていた。
「……悪かった。色々忙しくて」
『ふん、まぁいいわ。電話を掛けてきただけマシよね。それで? どんな用事があって掛けてきたのかしら?』
「別に用事は無い。ただ常盤社長に言われて電話を掛けただけだから」
わざと常盤恵理が機嫌を悪くするような事を言った。俺には確信があったからだ。……きっと恐らく常盤恵理はもう鈴音には手を出さないだろと言う確信が……。それは俺が電話連絡を怠っていたのに無反応だったからだ。
『な、何よ! 本当に失礼な人ね! 切るわ!』
電話越しからヒステリックな喚き声が聞こえ、突然プツリと電話は切られた。
「全く……嫌な女だ……」
俺は2杯目の缶ビールを取りに台所へと向かった。
そして再び和也からの連絡が入ってきた――
今夜の料理はミートソースパスタだ。ミートソースは仕事が休みの日にまとめて作り置きし、小分けして冷凍保存してある。それを取り出すと、パスタをゆで始めた。その間にレタスをちぎり、キュウリをスライスして皿にもりつけて、ミニトマトを添える。次にミートソースをレンジで加熱している間にパスタの湯で具合を確認する。
「……よし、こんなものか」
パスタの湯を切って、深めの皿に入れて温めたミートソースを掛けると、トレーにサラダとパスタを乗せて部屋へと運ぶ。
テーブルの上にトレーを乗せるとすぐにテレビをつけて食事を開始した。
テレビはあまり面白くも無いバラエティ番組をやっている。
鈴音と交際していた頃はあまりテレビをつけたことは無かった。2人で向き合って料理を食べ……会話を楽しんだ。
あの頃は本当に幸せだった。鈴音が俺の全てだった。
いずれ結婚して、可愛い子供に恵まれ……幸せな生活がずっと続くと思っていたのに、常盤家によって俺達は引き離されてしまった……。
「鈴音…」
食事をしながら思わずポツリと呟く。今頃鈴音はどうしているのだろう……。
鈴音が夢に出てこない日は無かった。夢の中では幸せだった。しかし朝目が覚めると、残酷な現実が待っている。
愛する鈴音が手の届かない場所にいると言う、悲しい現実が――
これから俺は常盤恵理に電話を掛けなければならないのに、鈴音の事ばかり考えていた。
「……御馳走さま」
1人きりの食事を終え、食べ終えた食器を持ってキッチンへ向かうと後片付けを始めた。
全ての食器をや調理器具を洗い終えて、冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出して再び部屋に戻るとプルタブを開けた。
プシュッ!
音を立てて蓋が開くと、ビールを煽る様に飲んだ。……これから憂鬱な相手に電話を入れなければならないのだ。とてもシラフの状態では電話など出来そうに無かった。
「ふぅ~…」
トン
ガラステーブルの上に飲み終えた缶ビールを置くと、スマホに手を伸ばし……ため息をつきながら常盤恵理に電話を掛けた。
トゥルルルルル…
トゥルルルルル…
「……出ないな……」
結局5コール目まで待っても電話に出る気配は無かったので電話を切ると、2本目の缶ビールを取りに行く為に立ち上がった時、不意に着信音が流れてきた。着信相手を見ると、案の定常盤恵理からだった。
「参ったな……」
渋々スマホをタップした。
「もしもし……」
『もしもし、直人? 今電話したでしょう?』
「ああ、したよ」
『何ですぐに電話を切ったのよ』
「は?」
聞き捨てならないことを言われた。
「どこがすぐになんだ? 5コール待って出なかったから電話を切っただけじゃないか」
『たったの5コール目でしょ! しかも何よ! 仮にも婚約者である私に2週間以上も電話してこなかったじゃないの! 始めに言ったわよね? 毎日1日2回掛けてくるようにって!』
そう言えば、そんな約束をさせられていたけれども……鈴音に嫌がらせを働いた事を知り、もう電話を掛ける気力は無くしていた。
「……悪かった。色々忙しくて」
『ふん、まぁいいわ。電話を掛けてきただけマシよね。それで? どんな用事があって掛けてきたのかしら?』
「別に用事は無い。ただ常盤社長に言われて電話を掛けただけだから」
わざと常盤恵理が機嫌を悪くするような事を言った。俺には確信があったからだ。……きっと恐らく常盤恵理はもう鈴音には手を出さないだろと言う確信が……。それは俺が電話連絡を怠っていたのに無反応だったからだ。
『な、何よ! 本当に失礼な人ね! 切るわ!』
電話越しからヒステリックな喚き声が聞こえ、突然プツリと電話は切られた。
「全く……嫌な女だ……」
俺は2杯目の缶ビールを取りに台所へと向かった。
そして再び和也からの連絡が入ってきた――