本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
川口直人 82
1月10日 午前7時半――
出勤前のコーヒーを飲みながらスマホに入っていたメッセージを読んでいた。
『おはよう、兄ちゃん。今日からまたバイトが始まるよ。今夜は新宿の無国籍居酒屋でバイトなんだ。もし良かったら仕事帰り、寄らない?』
「う~ん……行きたいのは山々だけどな……」
今日は17時から常盤社長との面談が入っているのだ。
「すまないな……和也」
俺は断りのメールを入れるべく、スマホに文字を打ち込んだ。
「よし、送信っと」
和也にメールを送信すると、2杯目のコーヒーを飲みながら1週間ほど前の岡本との電話のやり取りを思い出していた。
まさか鈴音の周囲に2人の男が纏わりついているとは思わなかったが……でも考えられる事だった。鈴音は気立てが良いし、何と言っても人目を引くほどに綺麗だ。それを肝心な本人が自覚していないというのもある意味凄いが、その為に異性の好意にも気付きにくいのだろう。
岡本の言葉が頭をよぎる。
『俺から鈴音にさり気なく、釘を刺しておくよ』
そんな事言っていたけど……あいつは自覚があるのだろうか? 自分が一番俺にとって要注意人物であると言う事が……。
「さて、仕事に行くか」
残りのコーヒーを飲み終えると、椅子から立ち上がった――
****
「ふ~む……」
俺の向かい側には真剣な表情で書類を眺めている常盤社長がいる。今回渡した書類は台湾の企業が川口家電に融資を持ちかけている話を書面化したものだった。
「……なかなかやってくれるじゃないか? まさかここまで話が進んでいるとは思わなかったよ。娘と2月に結婚式を挙げる話はどうなった?」
「え……?」
俺は耳を疑った。確かに最初に引き合わされた直後に常盤恵理が「結婚式は2月14日に挙げたい」何て話が出てきたことがあったが、あれは冗談だと思っていた。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ! あの話は冗談では無かったのですかっ!?」
「ああ……冗談だ。気にするな」
常盤社長は何が面白いのか、口元にニヤリと笑みを浮かべる。
「質の悪い冗談はやめて下さい……」
溜息をつくと、常盤社長が言った。
「君……そんなに恵理との結婚が嫌か? 最近恵理とは会っているのか?」
「……恵理さんからは最近連絡がありません……」
「連絡が無い……と言う事は君からはしていないのだな?」
「用があればしますが……無ければしませんね」
「君は随分淡泊な人間なのだな」
「……よく分りません」
自分が淡泊だとは思ったことは無い。何しろ鈴音と付き合っていた頃は会えない日は電話を欠かした事は無いくらいだった。
「まぁいい。せいぜい頑張るんだな。君が何所まで出来るか見届けさせてもらうよ。後は……私から言う事では無いが、せめて1度くらいは恵理に連絡を入れてやってくれ。まだ一応婚約者なのだからな」
「……はい、分りました。では本日はこれ位にさせていただきます」
頭を下げると、立ち上がり……常盤社長に告げた。
「今夜、恵理さんに電話を入れてみる事にします」
「ああ、分った」
常盤社長はこちらを見ることなく返事をする。
「失礼いたします」
俺は社長室を後にした――
出勤前のコーヒーを飲みながらスマホに入っていたメッセージを読んでいた。
『おはよう、兄ちゃん。今日からまたバイトが始まるよ。今夜は新宿の無国籍居酒屋でバイトなんだ。もし良かったら仕事帰り、寄らない?』
「う~ん……行きたいのは山々だけどな……」
今日は17時から常盤社長との面談が入っているのだ。
「すまないな……和也」
俺は断りのメールを入れるべく、スマホに文字を打ち込んだ。
「よし、送信っと」
和也にメールを送信すると、2杯目のコーヒーを飲みながら1週間ほど前の岡本との電話のやり取りを思い出していた。
まさか鈴音の周囲に2人の男が纏わりついているとは思わなかったが……でも考えられる事だった。鈴音は気立てが良いし、何と言っても人目を引くほどに綺麗だ。それを肝心な本人が自覚していないというのもある意味凄いが、その為に異性の好意にも気付きにくいのだろう。
岡本の言葉が頭をよぎる。
『俺から鈴音にさり気なく、釘を刺しておくよ』
そんな事言っていたけど……あいつは自覚があるのだろうか? 自分が一番俺にとって要注意人物であると言う事が……。
「さて、仕事に行くか」
残りのコーヒーを飲み終えると、椅子から立ち上がった――
****
「ふ~む……」
俺の向かい側には真剣な表情で書類を眺めている常盤社長がいる。今回渡した書類は台湾の企業が川口家電に融資を持ちかけている話を書面化したものだった。
「……なかなかやってくれるじゃないか? まさかここまで話が進んでいるとは思わなかったよ。娘と2月に結婚式を挙げる話はどうなった?」
「え……?」
俺は耳を疑った。確かに最初に引き合わされた直後に常盤恵理が「結婚式は2月14日に挙げたい」何て話が出てきたことがあったが、あれは冗談だと思っていた。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ! あの話は冗談では無かったのですかっ!?」
「ああ……冗談だ。気にするな」
常盤社長は何が面白いのか、口元にニヤリと笑みを浮かべる。
「質の悪い冗談はやめて下さい……」
溜息をつくと、常盤社長が言った。
「君……そんなに恵理との結婚が嫌か? 最近恵理とは会っているのか?」
「……恵理さんからは最近連絡がありません……」
「連絡が無い……と言う事は君からはしていないのだな?」
「用があればしますが……無ければしませんね」
「君は随分淡泊な人間なのだな」
「……よく分りません」
自分が淡泊だとは思ったことは無い。何しろ鈴音と付き合っていた頃は会えない日は電話を欠かした事は無いくらいだった。
「まぁいい。せいぜい頑張るんだな。君が何所まで出来るか見届けさせてもらうよ。後は……私から言う事では無いが、せめて1度くらいは恵理に連絡を入れてやってくれ。まだ一応婚約者なのだからな」
「……はい、分りました。では本日はこれ位にさせていただきます」
頭を下げると、立ち上がり……常盤社長に告げた。
「今夜、恵理さんに電話を入れてみる事にします」
「ああ、分った」
常盤社長はこちらを見ることなく返事をする。
「失礼いたします」
俺は社長室を後にした――