本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
川口直人 86
『な、何言い出すんだよ! お前は!』
俺の言葉に狼狽した岡本の声が電話越しに聞こえてきた。
「何でそんなに驚くんだ? あ! まさか……!」
『いや、待て! お前が思っているような事は何も無いからな!?』
妙に気になる言い方だったが、恐らく口を割らないだろう。
「そう……か、ならいいんだが……。ところで何の用があって電話してきたんだ?」
『ああ、お前にとっておきの情報を教えてやろうと思ってな?』
勿体つけた言い方を岡本はする。
「とっておき……?
『そうだ。鈴音にいいよっていた会社の男がバリ島へ転勤になったんだよ』
「え? 何だって?」
『どうもはっきり鈴音は言わなかったが……多分その男は鈴音にバリ島へ一緒に来てもらいたかったんだろうな? だが、鈴音に全くその気は無かった。それであっさりふられたんだろう?』
その話を聞くと男が哀れになった。俺も鈴音と交際まで至るのにどれだけ苦労したかが思い出されてしまった。
『そう……か』
「何だよ、そんな暗い声出して。嬉しくないのかよ? 鈴音はまだお前が忘れられなくてその男を振ったんだぞ?」
『そうかも知れないが……相手の男の気持ちを考えると気の毒で……』
岡本はそういう事を考えたりはしないのだろうか?
『はぁ? お前何言ってるんだよ? 邪魔者がいなくなったんだ。普通は喜ぶべきだろう?』
呆れた口調の岡本。恐らくこの男には人の気持ちを汲み取ることが出来ないのだろう。
「そんな言い方するなよ。お前は誰かに告白するって事がどれだけ勇気がいることなのか分かっているのか? それが決して叶わないのが分かりきっていながら、それでも告白するって言うのがどれ程のものか……」
しかし、岡本は返事をしない。
「……でも、教えてくれてありがとう。それじゃ……またな」
『あ、ああ……またな……』
ためらいがちな岡本の声を聞きながら電話を切った。
「バリ島か……」
相手はどんな男だったのだろう。だがきっと良い人間だったのだろう。鈴音に告白したのは一緒にバリ島へ行って貰いたかったからに違いない。
「鈴音……待っていてくれ。明日、常盤社長と決着をつけるから……」
テーブルの上に置かれた書類を見つめながら決意を口にした――
****
翌日午前11時――
俺と父は常盤商事の社長室に来ていた。目の前には常盤社長が真剣な眼差しで俺が念入りに準備した書類に目を通している。
「……」
暫くの沈黙の後、ついに常盤社長口を開いた。
「分かった……。提示額は全て揃えられたのだな? では、私は川口家電からは手を引こう」
「本当ですか!?」
俺は身を乗り出して社長に尋ねた。
「ああ、本当だ。ただし、認めたのは私だけだ」
「え……?」
「それは一体どういう意味なのですか?」
俺に続き、父が尋ねた。
「恵利に結婚を諦めさせるのは……直人君。君の役割だ」
「え……?」
常盤社長の言葉に息を呑んだ――
俺の言葉に狼狽した岡本の声が電話越しに聞こえてきた。
「何でそんなに驚くんだ? あ! まさか……!」
『いや、待て! お前が思っているような事は何も無いからな!?』
妙に気になる言い方だったが、恐らく口を割らないだろう。
「そう……か、ならいいんだが……。ところで何の用があって電話してきたんだ?」
『ああ、お前にとっておきの情報を教えてやろうと思ってな?』
勿体つけた言い方を岡本はする。
「とっておき……?
『そうだ。鈴音にいいよっていた会社の男がバリ島へ転勤になったんだよ』
「え? 何だって?」
『どうもはっきり鈴音は言わなかったが……多分その男は鈴音にバリ島へ一緒に来てもらいたかったんだろうな? だが、鈴音に全くその気は無かった。それであっさりふられたんだろう?』
その話を聞くと男が哀れになった。俺も鈴音と交際まで至るのにどれだけ苦労したかが思い出されてしまった。
『そう……か』
「何だよ、そんな暗い声出して。嬉しくないのかよ? 鈴音はまだお前が忘れられなくてその男を振ったんだぞ?」
『そうかも知れないが……相手の男の気持ちを考えると気の毒で……』
岡本はそういう事を考えたりはしないのだろうか?
『はぁ? お前何言ってるんだよ? 邪魔者がいなくなったんだ。普通は喜ぶべきだろう?』
呆れた口調の岡本。恐らくこの男には人の気持ちを汲み取ることが出来ないのだろう。
「そんな言い方するなよ。お前は誰かに告白するって事がどれだけ勇気がいることなのか分かっているのか? それが決して叶わないのが分かりきっていながら、それでも告白するって言うのがどれ程のものか……」
しかし、岡本は返事をしない。
「……でも、教えてくれてありがとう。それじゃ……またな」
『あ、ああ……またな……』
ためらいがちな岡本の声を聞きながら電話を切った。
「バリ島か……」
相手はどんな男だったのだろう。だがきっと良い人間だったのだろう。鈴音に告白したのは一緒にバリ島へ行って貰いたかったからに違いない。
「鈴音……待っていてくれ。明日、常盤社長と決着をつけるから……」
テーブルの上に置かれた書類を見つめながら決意を口にした――
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翌日午前11時――
俺と父は常盤商事の社長室に来ていた。目の前には常盤社長が真剣な眼差しで俺が念入りに準備した書類に目を通している。
「……」
暫くの沈黙の後、ついに常盤社長口を開いた。
「分かった……。提示額は全て揃えられたのだな? では、私は川口家電からは手を引こう」
「本当ですか!?」
俺は身を乗り出して社長に尋ねた。
「ああ、本当だ。ただし、認めたのは私だけだ」
「え……?」
「それは一体どういう意味なのですか?」
俺に続き、父が尋ねた。
「恵利に結婚を諦めさせるのは……直人君。君の役割だ」
「え……?」
常盤社長の言葉に息を呑んだ――